ライブのおはなし
これは前回の「図書室ではお静かに」が一学期の授業参観だとしたら、今回はまさに「総集編にして新入生歓迎会」だったように思います。
2026年5月30日、下北沢・音倉で開催されたワンマンライブ「本が苦手なぼくと図書委員のあのこの物語」は、しろくま図書委員会にとって大きな節目となる公演だった。春学期ライブの直後、オープンマイク出演を重ねる中で「この物語の続きを見たい」と言ってくれた会場との出会いから実現した特別公演である。普段は季刊ペースで活動する彼らが一ヶ月後に再びライブを行うという異例の展開だったが、その挑戦に応えるように客席は過去最大級の賑わいを見せた。
ライブは「世界は図書室から始まる」で幕を開ける。初めて訪れた観客も多いことを意識し、宮野くんと図書委員のあのこは、まず自らの設定を丁寧に説明するところから始めた。昭和の中学校を舞台にした物語であること、観客も中学生の気持ちで参加してほしいことが語られ、会場は少しずつ「若葉第一中学校」の空気へと変わっていく。
第一部では、「踊り場でシャドウ」「どこにいるのかわからない」を通して、宮野くんが図書室の存在と、そこにいる謎の少女を発見する場面が描かれる。「本が好き 本はにがて」では二人の対照的な価値観が鮮やかに示され、「あなたの星空へ」では読書が持つ広がりや憧れが歌われた。そして「はじめまして」「すれちがいの図書室」「ころがる消しゴムのように」によって、二人が実は教室の中で近い位置にいたことが明かされ、物語の第一章が立体的に浮かび上がる。
中盤では恒例の「しろくま宣言」が行われ、客席も一緒に宣誓。続く「私は誰より図書委員」では図書委員の誇りと情熱が高らかに歌われた。また、柏原はねみさんによるキャラクター解放MCでは、しろくま図書委員会設立の背景や、AI時代だからこそ読書文化を大切にしたいという活動理念も語られた。単なる学園ラブコメではなく、本と人との関係を考えるユニットであることがあらためて示された時間だった。
第二部は「もしも借りたら」から始まり、「本の続きを生きる」「図書室の待ち人」と続く。本を読むことが単なる娯楽ではなく、過去から未来へ受け継がれるバトンであることが静かに描かれる。そして長年温められてきた「雨降り図書室」が披露される頃には、観客もすっかり図書室の住人になっていた。
後半は「たかが本されど本」「妄想モンスター」「絶対禁止」と代表曲が続き、会場全体がしろくま図書委員会独特の参加型空間へ変化していく。大声で歌ったり笑ったりした後、「図書室ではお静かに」で一転してささやき声のコーラスへ。賑やかさと静けさ、その両方を共有できるのがこのユニットの魅力なのだと実感させられる場面だった。
最後は「本の住所」で締めくくられた。図書室の本を元の棚へ戻すように、観客もまた物語を胸に抱えて日常へ帰っていく。そして同時に、この夜は新たな始まりでもあった。客席を埋めた多くの初めての観客とともに、しろくま図書委員会は下北沢で新しいページを開いたのである。90分にわたるこの公演は、これまでの物語の総まとめであると同時に、これから先へ続く物語の序章でもあった。