ライブのおはなし

「冬の星座を見るように」

2026年2月1日、神楽坂マッシュレコード。冬の午後の光がまだ街に残る時間帯、対バンの余韻に満ちた会場の空気を引き継ぐように、しろくま図書委員会第14回ライブ「冬の星座を見るように、」は幕を開けた。スクリーンに映し出された過去ライブのあらすじと未発表曲の旋律は、これまでの物語を一瞬で現在へと引き寄せる導火線のようだった。観客の胸の奥に眠っていた記憶が、静かに、しかし確実に燃え始める。

インストのように立ち上がる「雪の日も本のなか」。音を吸い込む雪、息をひそめる図書室。だがその静けさは停滞ではなく、感情が凝縮していく前触れの静寂だ。白く覆われた世界は、日常を遮断し、物語の内部へと人を閉じ込める。ここから、冬の物語はゆっくりと温度を上げていく。

昭和の中学校、階段の踊り場、小さな窓。その覗き窓の向こうにいる“あのこ”。「踊り場でシャドウ」では、宮野くんの投げ続ける影のボールが、言葉にできない思いの代わりに空間へ放たれていく。シャドウピッチは練習ではない。届かない距離へ向かって投げ続ける、無言の呼びかけだ。

「たかが本されど本」では、本を読まない少年と、本に人生を預ける少女のすれ違いが、軽妙なやりとりの奥で鋭く火花を散らす。静まり返る書架の間に漂うのは沈黙ではなく、交わる寸前で止まった言葉たちの気配だ。

「きみとぼくは同じ」では、同じ教室にいながら別の星に住むような隔たりが歌われる。しかし、その距離は絶望ではない。むしろ引力のように互いを引き寄せ、言葉にならない感情を増幅させていく。

ここで空気は爆ぜる。「ハッピーしろくまイヤー♪」が始まると、会場は一気に祝祭の中心へと変わる。図書室は魔法の入口となり、観客の声は呪文となって空間を満たす。「私は誰より図書委員」では、読書がもたらす経験と勇気が宣言のように響き渡り、しろくま宣言の唱和は、ただの観客を“委員会の一員”へと変える儀式となった。

キャラ解放MCから星の話題へ。オリオン座、宇宙、宮沢賢治。オカリナによる「星めぐりの歌」が流れると、会場は一瞬にして郷愁と宇宙的広がりに包まれる。共有された旋律は、秘密を分かち合うような親密さを生み、物語の核心へ観客を導いていく。

「あなたの星空に」は、本をめくる指先を宇宙航行に変え、想像力を無限の彼方へ放つ。そして表題曲「冬の星座を見るように」は、この夜の感情の中心に火を灯す。東京の雲に遮られた星空、祖母の家で見た満天の光景、伝えたいのに伝えられない思い。宮野くんの胸の内で、言葉にならない熱が確かに燃えている。

三学期の気配を運ぶ「手袋を外して」では、凍える空気の中でも物語を先へ進めずにはいられない衝動が描かれ、「冬のひだまり」では光の席に移ったあのこを見つめる視線が、静かな執着のように温度を帯びていく。

終盤、「妄想モンスター」は読書が生む想像力の暴走を解き放ち、会場の心拍数を一気に引き上げる。続く「本の住所~NDCコードのうた」はユーモアで頬を緩めながらも、知の世界へ帰還する優しい道しるべとなった。

アンコールでは感謝の言葉がこの場所への愛着を照らし出す。そして最後に歌われた「あなたに会いに」。本の中の存在へ近づこうとするその願いは、恋にも祈りにも似て、会場の空気を静かな震えで満たした。

三年目の冬。距離は縮まらない。けれど、想いは確実に強くなっている。
冬の星座を見上げるように、届かない光へ視線を送り続けること。
それは諦めではなく、情熱のかたちなのだ。

その夜、神楽坂の小さな空間は、静かな銀河では終わらなかった。
胸の奥で燃え続ける恒星のような熱を、確かに宿していた。

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