しろくま図書委員会

謝辞

2024年11月3日日曜日  アルバム発売ライブ「Bar愛読書綺譚」満席御礼申し上げます

アルバム「図書委員とぼく I どうしたらきみと話せたんだろう」の通信販売はこちらより始まりました。

活字好きなあなたのための、しろくま図書委員会のこれまでのお話

※次のライブのために、読んでおきましょう。まだ、間に合います。

しろくま図書委員会の春学期(2023年4月8日)

開演。懐かしのチャイム風イントロから、読書日和。読書にふさわしい条件なんて、いつでもどこでもいい、という主張はわかりすいことでしょう。

読書日和(上)

雨の日は読書日和 外で遊べないこと
 忘れるくらい夢中になれる
晴れの日は読書日和 光 揺れる本棚で
 好きな本たくさん選べる
風の日は読書日和 風雲急を告げるって
 こんな感じだって思える
月の日は読書日和 何も心配いらない
 ただ本を読んでいられる

永遠に読書日和 好きなだけ読んだら
 またあした 最初に戻る

初めての土曜日の委員会活動。物語を進めていくのは、ある日ある時から図書室に籠る図書委員のあのこに夢中な中学生、ぼくこと「宮野くん」と図書委員風の「名前のないこ」が、二人でギターを弾きながら歌っていくステージであることを説明。その実年齢に準拠して、昭和の舞台。中学校に上がったら図書委員になる女の子の歌すなわち彼女は小学生。

図書委員になりたい

春休みが終わったら いよいよ中学生
新しい制服を着るのは楽しみだけど

最初の自己紹介 趣味は読書ですっていうと
大人しい子に見られがち
本当は誰より 自信があるの本の中ではね

第一希望は図書委員 必ず立候補するから
誰よりも早く図書委員 きっと叶いますように

あたたかい日が続いて 早く咲いた桜は
入学式より早く散ってしまいそうだけど

中学デビューは 最初が肝心だってうわさ
だけど私は関係ない
期待してるの 委員会活動本に囲まれて

第一希望は図書委員 きっと立候補するから
第二第三も図書委員 誰にもゆずらない

真っ先に図書委員に なりたいなんていったら 
真面目な子に見られがち
本当は誰より 正直なだけ本が好きだから 

第一希望は図書委員 必ず立候補するから
誰よりも早く図書委員 きっと叶いますように

第一希望は図書委員 必ず立候補するから
学級委員はごめんです きっと叶いますように

ぼくこと宮野くんがぼやきます。図書室の窓から覗くと必ず見える、図書委員のあのこは、みじろぎひとつせず、本を読んでいる様子。それは一体、どんな気持ちなのだろう。お昼はもう食べたんだろうか。トイレとか行かないのだろうか。晴れた日など、外の日差しをヒトは本能的に浴びたいと思わないんだろうか。一体、どういう気持ちなんだろうかと。ぼやくのです。

本が好き

本が好き なによりも だれよりも いつからか
開くたび 明かされる ひみつの予感に胸がさわぐ
本が好き 厚ければ 厚いほど 好きになる
めくるたび 深くなる 世界のとりこになってゆく

翼がなくても飛んで行ける
このまま行方不明になってもいい
明かりがなくても進んで行ける
このまま何も見つからなくてもいい

本が好き なによりも だれよりも いつまでも
開くたび 囚われる 幾千万のことばたちに
本が好き めくるめく ストーリーに 満たされる
語られる 真実と まことしやかな嘘の誘惑

地図がなくても辿って行ける
このまま暗闇に落ちてもいい
時計がなくても時空をこえる
このまま明日がこなくてもいい
本が好き なによりも だれよりも いつまでも

ここで図書委員により、第一回しろくま宣言が堂々と行われました。一同、拍手するしかありません。

わたくし<br />
しろくま図書委員は<br /> 
本を愛し<br />
本に愛される活動を<br />
行うことを<br />
ここに宣言いたします<br />
 令和5年4月8日<br /><br />
第一回しろくま図書委員会<br />

ぼくこと宮野くんは、そんなにも、本が好きですか、と呆れるしかありません。が、行方不明になってもいいと言えるくらい没頭できるって素敵なことですね、という理解はします。そして、少しずつそんな図書委員のあのこのことが、気になって気になって、いつからか図書室の前をうろうろする日課ができます。昼休みも。放課後も。なぜかと言えば、未だ彼女の顔も名前も学年も、つまりクラスもわからないからです。学校じゅうをひそかに探し歩きました。どこにいるんだろうかと。でも、見つからなかったのです。ここにしかいないんです。図書室でしか、存在感を発揮していないのです。

多くの人は、ぼくこと宮野くん図書室に行って確かめて来てごらん、と、背中を押す気持ちになることでしょう。しかし、ぼくこと宮野くんがそもそも図書室を発見したのは、偶然なのです。それまでは知りませんでした。おまけに、図書室に入るどころか、本を読む、という習慣すらなかったのです。つまり、なんの用件で入っていくべきか、入ったらどう振る舞えばいいのか。それも見当がつかないのです。

本はにがて

パパはねうちにいる間はいつも 本を読んでるの
或いはそうでない場合はいつも お酒飲んでるの
だからなのかなママの話は聞かないの
よくわからないけどそういうものなのかな

ママがねパパのことをわるくいうの
いやだな本当にいやだな
それで僕は本はにがてになったの

パパはね起きている間はいつも 本を読んでるの
それからお酒を飲む時はいつも テレビ観ているの
だからなのかなママの話は聞こえないの
聞こえないからかなママの声はますます大きく

ママがねパパのことをわるくいうの
あんな大人になってはダメとか
それで僕は本はにがてになったの

学校でも読まないの宿題でも読まないの
怒られても読まないもん
読まなくても僕死なないもん

どこにいるのかわからない

たぶん僕には気になる子ができた
朝も昼にもその姿をさがす

のに、どこにいるのかわからない
まず、顔も名前もクラスも
だから、確かめなきゃ確かめなきゃ
ならないような気がする
だって、遠足や運動会の写真にも
いないみたいなんだ

用もないのに階段をのぼるよ
ここで振り向けばその姿に会える

のに、どこの誰だかわからない
まだ、顔も名前もクラスも
だけど、あそこでならあそこでなら、
確かめられる気がする
だって、遠足や運動会の写真には
いないみたいなんだよ

でも、物語は進まなければなりません。それは宿命です。ぼくこと宮野くんはついに決心します。とにかく図書室に忍び込んで、顔だけ見てこよう。うまくすれば名札でクラスが分かるかもしれない。今日のところはそこまでにして、逃げ帰ればいいんだから。ゴーゴー宮野馨。自分を鼓舞するくらいはできます。

はじめまして

あらたまってこんにちはとか初めましてとか
言うべきだろうか来たことがない部屋
扉を引くと思ったよりも大きな音がして
首をすくめても 誰も気にしない部屋

会いたいというよりも みていたいと言うべきか
そんな理由ではだめだろなと背を丸めて忍ぶ書架

覗いていた窓の向こうは意外に広くて
摺り足で探す身を隠しながら
息を止めて目だけ使ってあの子を見つけて
鼻すする音が世界にこだまする

後ろ姿ではなく読んでみたい名札や
肩や背の高さ色々と 調べもののあるふり

会いたいというよりも見ていたいと言うべきか
そんな理由ではだめだろなと肩をすくめ忍ぶ書架

こうして、図書室に住んでいるような「図書委員のあのこ」、としか呼びようのない女のこに夢中になる中学生、宮野くんはほんの少しだけ、彼女との距離を縮めた気になったのでした。残念ながら学年もクラスも分かりませんでしたが、何せ名前が分かったのです。その名を知ってからのぼくこと宮野くんの傾倒ぶりは、筆舌に耐えない滑稽さです。みなさんも、身に覚えはあるでしょう。ぼくこと宮野くんが恥ずかしさのあまり彼女の名前を口にできないために、図書委員のあのこは、図書委員さんとしかこの物語では呼ばれないため、ライブにおいてもその名を紹介されないわけです。

さてここへ来て、その名を伏せたままの図書委員のあのこが、自分が虜になった本の魅力について語り始めます。静かに、穏やかに語っていたのは最初の二分。気がつけば五分にわたって、実演販売のように小道具を交えながら、夢中で語り続けました。

暑い。汗かいてるし。熱すぎる。彼女は、隙を見ては図書室に駆けていくのでした。図書室にかける少女だったのです。

あなたに会いに - 昼休みの図書室、二年後
昼休みの図書室は 誰もいないから
ほんの束の間 あなたに会いに行く
到底 いくことも かなわないような
深い森に あなたは  すんでる

私は遠くから そっとのぞく
音を立てず静かに 表紙をひらいて
心臓の音がきこえるくらい いま近くにいるから
もうだれも 邪魔しないで

昼休みの図書室は 昨日の続き
とまっていた 時計が動き出す
到底 みることも かなわないような
ちがう時代に あなたは いきてる

私は遠くから そっとよりそう
透明なまま激しく 想いをよせて
熱い呼吸をかんじるくらい いま近くにいるから
この瞬間 こわさないで

どんなにあなたに会いたかったか 駆け出したら止まらないから
 読み進めるほど速くなってゆくその背中追いかけてく

心臓の音がきこえるくらい いま近くにいるから
もうだれも 邪魔しないで

図書委員のあのこは、本を愛するが故に、その穏やかで清楚な物腰を育んでまいりました、と思われます。しかし実はその一方で本を愛するが故に、本の扱いを知らない者や、読書行為を軽視する者へのひそかな反発あるいは反感、憤怒にも似た非常に強い感情を押し殺して生きていたのでした。その思いは、実際いつどこで暴発するやもしれないレベルです。

思いあまって普段は外では見せることのない、白い耳をかぶり、歌い出したのです。

絶対禁止
気温25度以上は禁止です 汗をかいてしまうから
本がよごれてしまうから気温25度以上は禁止です

食べながらなんてもってのほか手を洗ってきてください
本がよごれてしまうから 飲食禁止は常識です

図書室の本には透明なカバーフィルムがはってあるけど
決して万能じゃないんです 大事にしてほしいんです

ページを折るのは禁止です 一度折ったらもどらない
本がいたんでしまうからページを折るのは禁止です

線をひくなんてもってのほかあなたの本じゃありません
本がいたんでしまうから あとの人だって困ります

図書室の本を大切に できない人は来ないでください
あなたは出入り禁止ですホントはそう言いたいけれど

よごれた本をみるとかなしくなる
いたんだ本はかわいそうだから私の中では絶対禁止!
図書室の本はいつだって 手にとる人を待ってます
みんなの役に立つために あなたの役に立つために

図書委員のあのこの思いがけない剣幕とその後の妙に外向的なテンションに、ぼくこと宮野くんは、思わずおどけてみせます。おやもしかしたら、仲良くなるチャンスは来たのかもしれませんよ。しかし、物語がそんなに易々と転ぶはずもないのでした。

すれちがいの図書室

ここのところ図書室は利用者の少なさが課題
図書室のドアを開けて誰でも入りやすくしています

あのこの姿が見えなくてドアが開いてるのに気づいたよ
恐る恐る近づいて首だけのばしてのぞいたら

「あれ、えーっと、宮野くん?」

あのこの口からぼくの名前が飛び出してきて耳を疑う
珍しい人が来てくれたでもドアの前から動かない

なぜ きみは どうしてなぜ きみは どうして
ぼくの名前を知ってるの?
図書室に入らないの?

すれちがいの図書室のドアは まだ開いたばかり・・・

同じクラスの男子だけど話すのはたぶん初めてで
図書室もたぶん初めてよねそんなに入りづらいのかしら

不意うちであたまは真っ白身体に電気が走ったよ
目があって声かけられてああどうすればいいのだろう
あのこは少し首をかしげて黒い瞳でぼくを見つめる

いつまでそこに立ってるつもり?
ドアを塞がないでほしいのに

なぜ きみは どうしてなぜ きみは どうして

ぼくの名前を知ってるの?
図書室に入らないの?

すれちがいの図書室のドアは まだ開いたばかり・・・

図書委員のあのこの普段見たこともない演劇部ばりの台詞回しにまごつく宮野くんを尻目に、ワンツースリーのカウントで歌いはじめます。誰がそうした図書委員。

私は誰より図書委員
幸せをつかむなら 後ずさりしてちゃだめね
本からそう教わった 私は無敵な図書委員
読めば読むほど重なる経験 どんな敵だって怖くない
縦横無尽に駆け抜けたパラレルワールドはここかしこ

本の世界は無限の世界
迷い込んだら戻れない? いいえ心配はいらないわ
チャイムがなれば ここはいつもの図書室だから

悲しみをいやすなら 背中を向けてちゃだめね
本からそう教わった 私は夢見る図書委員
読めば読むほど重なる人生 高くなってく経験値
以心伝心で共鳴した あの人たちはいまいずこ

さあ あなたも本を手にとって
素敵な体験重ねましょ 初めてだって大丈夫
本の借り方 探し方 教えてあげるから

貸出カードは5枚目 校内一位じゃないけれど
何でも聞いてください 私は誰より図書委員

何でも応えてあげる 私はあなたの図書委員
初めてだって大丈夫
でも貸出カードだけは 忘れないでね

ライブしろくま図書委員会の春学期においてはここまで、物語の設定の説明を中心に進めて来ました。このタイミングで一度、キャラクタから解放されたMCの時間となりました。ようやく図書委員こと柏原はねみは自己紹介をします。ここまでおよそ五十分弱。なぜかほっとする瞬間でした。なんという縛りでしょうか。毎回やることになるのでしょうか。

冬の間に、春のライブ開催を目指して春の歌を作っていました。もちろん、春になった今、夏を目指し夏の歌を作っています。

春の約束

3月の別れは何度も経験してきたけれど
いつだって初めてみたいに
今日でさよならとここから離れると思うだけで
胸がしめつけられる

毎日通った図書室で みんなで作った季節のかざり
失敗して笑ったこともあったねきみは意外と不器用で
またここへ帰ってくるね それは春の約束

ポスターもしおりも紙芝居だって作ったけれど
まだ足りない気がする
楽しい時間はあっという間にすぎて その
速さに追いつけないけど

毎日通った図書室で つむいだ私たちの物語
どんなにささやかで平凡でも
すてきな一冊の本のよう
またここできっと会える それは春の約束

簡単に消えたりしない きみの笑顔もその声も
忘れられない本のように

またここへ帰ってくるね それは春の約束

図書室で借りた本を返すと、図書委員さんが本棚に戻し片付けてくれるのだそうです。そして、返す場所って決まっているんですって。図書室に本を借りに行ったことのないぼくこと宮野くんは、知りませんでした。

本の住所~NDCコードのうた
Fu Fu Fu~
おかえり 今日はたくさん返ってきたね
おかえり それぞれの場所に戻しましょう
本には 住所があるんです
1は哲学 2は歴史 3は社会科学
覚えておくと探しやすいです Fu Fu Fu~

まいごに ならないように正しい住所に
かえして あげられたら嬉しいでしょう?
次の ブロックへ移動して
4は自然科学 5は技術 6は産業
ほらね、もっと知りたくなったでしょう?
7は芸術 8は言語 9は一番多い
文学作品です Fu Fu Fu~

きちんと 背表紙を手前にだして
そろえば 本もよろこぶ美しい本棚
残すは 最後のブロック
0は総記 1から9に あてはまらない
本は全部ここへ 戻したらおしまいですFu Fu Fu~

これにて本編終了。アンコールには、読書日和の続編を歌いました。

読書日和(中)

春の日は読書日和 あたたかい図書室で
 新しい本と出会える
空の日は読書日和 羽を広げどこまでも
 自由に飛んでいける
海の日は読書日和 宿題の課題図書
 読み始めるのにちょうどいい
山の日は読書日和 見晴らしのいいベンチで
 本を読んだら気持ちいい

永遠に読書日和 好きなだけ読んだら
 またあした 最初に戻る

終演。会場に流れるのは、あの季節の図書室に。なぜ、なんで、どうして、こんな物語にたどり着いてしまったのか、否、人生の半ばにこんな冗談のようなお話が待っていたのは、誰もが過ごした制服の頃の思い出は、二十一世紀の今ほど多様ではなかったのかもしれません。時間も空間も隔てながら知らず知らず共有していた思い出が為せる、あるいは必然だったのかもしれません。

あの季節の図書室に

胸の奥の とびらが
あの図書室につながっている
きみがいて ぼくがいた
あの季節の図書室に

ぼくらは 同じ時間を
ほんのひととき 過ごしただけ
それでも まぶしく あざやかに
目に浮かぶのは なぜ

立ち止まり 振り返り
とびらをそっと開けてみたら
とめどなく あふれだす
光のなか泳ぐように

ぼくらは 同じ時代を
ほんのひととき 過ごしてるだけ
それでも 確かに ここにいた
その証をうたいたい

近づけば 遠ざかる
あの大きな月のように
いまはもう 届かない
あの季節の図書室で

ぼくらは 同じ時間を
ほんのひととき 過ごしただけ
それでも 強く あざやかに
思い出すのは なぜ

いまつながるのは なぜ

しろくま図書委員会の物語はいくらか重層的で、分かりにくくなる場合がございます。MCでは、ぼくこと宮野くんこと「石村吹雪」というネタが説明なしに飛び交ったりしました。少しずつ、私たちのしろくま図書委員会の物語につきましてご理解いただけますように。

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